アナ雪2ステマ疑惑から考えるユーザーを騙すステルスマーケティングの問題点と歴史

ステルスマーケティング 時事ネタ

人気作品「アナと雪の女王2」(以下、「アナ雪2」)が公開されましたが、この作品の宣伝をめぐって炎上。
ディズニーが謝罪文を公開する事態となりました。
その原因は主にステマにあります。
インターネットや広告宣伝に詳しい方ならピンとくるかもしれませんが、詳しくない方もおられますよね。
子供を中心に大人からも人気のディズニー映画をめぐって一体何があったのか、詳しくご紹介していきます。

「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」に関するお詫び

この度は、「『アナと雪の女王2』感想漫画企画」につきまして、ご参加いただきましたクリエイターのみなさま、ファンのみなさまに多大なご心配、ご迷惑をお掛けし、深くお詫び申し上げます。
本企画は、クリエイター7名のみなさまに映画『アナと雪の女王2』をご覧いただき、ご感想を自由に表現いただいた漫画をTwitterに投稿いただく企画として実施したものです。
本企画に伴う投稿は、「PR」であることを明記していただくことを予定しておりましたが、関係者間でのコミュニケーションに行き届かない部分があり、当初の投稿において明記が抜け落ちる結果となってしまいました。
今後このような事がないよう、関係者一同、深く反省するとともに、コミュニケーション体制を見直し、再発防止策を講じてまいります。

ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社

引用元 ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社

ステルスマーケティングとは

ステルスマーケティングとは
ネットビジネスでよく耳にする「ステルスマーケティング」とは、宣伝と気がつかれないようにして宣伝をする行為を意味します。英語の「Stealth」は「人目を忍んで」「こっそりと」という意味を持つ言葉です。
敵のレーダーに捕捉されにくい飛行性能を持つ戦闘機はステルス戦闘機と呼ばれ、日本の自衛隊にも導入されています。ステルス戦闘機とステルスマーケティングに共通しているのは、どちらも相手に知られないようにして目的を達成しようとする点です。
広告が氾濫している世の中で消費者は企業の宣伝攻勢にうんざりさせられているだけに、商品を露骨に宣伝するような広告はどうしても嫌われてしまいます。そうした中でも宣伝だとバレないよう商品やサービスを巧妙に紹介すれば、絶大なマーケティング効果が得られるという事実が知られるようになったのです。

アナ雪2が炎上!?一体何が起こったのか

アナ雪2が公開され、SNSのツイッターでは人気の漫画家たちが感想を漫画にて投稿。


これ自体はSNSでよく見る光景ですが、あるユーザーにより「これはステマではないか」との指摘がなされます。
アナ雪2の感想マンガを投稿していた漫画家は7人いたのですが、全員の形式が非常によく似ており、投稿につけているハッシュタグも共通です。
さらに投稿時間もほとんどが19時付近と、不自然なほど投稿の内容が似ていたのです。
それが広告だと示す「PR」という表記について、当初はどの漫画家もつけておらず、いわゆる「ステマ(ステルスマーケティング)」による投稿だったのではないかと炎上する事態となりました。
この騒ぎを受け、ディズニーは謝罪文を公開しましたが、ステマとなったのはコミュニケーションが行き届かなかった結果であり、最初からそれを意図したものではないと表明しています。

何が問題だったのか!アナ雪2とステマについて解説

この一件で問題だったのは、アナ雪2の広告宣伝と思われるその投稿がステマだったのではないかとのことです。
宣伝自体が悪かったわけではありません。
ステマとは、それが広告だということを隠して行われる宣伝のことです。
簡単にいうと「やらせ」や「さくら」のことで、個人の発言のようでいて、実は広告主から報酬をもらっており、特定の商品やサービスに好意的な投稿をすることをステマといいます。
つまりは本当の感想ではない、最初から高評価することを目的とした投稿になりますから、それを見たユーザーを騙す結果となります。
一時期、インターネットでこのステマが横行していました。またつい先日も京都市が生んだ人気漫才コンビのミキにステルスマーケティング疑惑が持ち上がり、所属する吉本興業が疑惑を否定するという一幕がありました。この件もユーザーに対して不誠実な行為となりますし、情報が信頼できなくなる、ステマではない個人の発言やレビューの信頼性まで損なわれると問題になりました。
最近では広告業界もこれを問題視するようになっており、広告主から報酬をもらって作成した記事やSNSでの投稿には、それが広告であることを明示するため「PR」という表記をつけるというルールが普及しつつあります。
今回のアナ雪2に対する漫画家の感想漫画は、のちにプロモーションとして行われたことがわかりましたが、炎上する前は誰も「PR」の表記をつけておらず、まさにステマを疑う事態になり大きな問題とされました。

ステマが原因の炎上!広告主や広告代理店の責任を問う声も

この一件が炎上したのはもちろんユーザーに対して不誠実なステマという行為が大きな原因です。
先述の通り、最近ではステマに対して厳しい目が向けられるようになっており、この宣伝方法自体が炎上の原因になり始めています。
アナ雪は十分に人気の作品になっており、なぜわざわざこんな宣伝方法を選んだのか、堂々と宣伝すればいいのではないかという声も上がりました。
そして炎上が起きた直後、実際にステマとしての投稿を行った漫画家たちが謝罪の言葉と、PRの表記を追記するという事態になりましたが、彼らはいずれも依頼されてその投稿を行っていたわけです。
今回の一件の本当の原因は、依頼をしたその広告主や、この広告方法を実際に行った広告代理店にあるのではという声も上がっています。
今回ステマを行った7人の漫画家は、今回たまたま選ばれて、それを引き受けた結果、今回の件に加担する形となってしまいましたが、それを依頼する広告主や代理店がいる限り、当事者を変えてまた同じことが起きる可能性があります。
特に今回の一件で、ディズニーは謝罪文こそ公開しましたが、「PR」は当初つける予定だった、それが抜け落ちたのはコミュニケーションが行き届かなかった結果としています。
ただ、今回ステマを行った漫画家たちは、当初は全員がPR表記をつけておらず、のちに謝罪とPRである旨を追記するなど行動が統一されており、ステマを明確に意図して指示を出していた企画者がいる可能性が考えられます。
誰がどのように関わっており、どのようなコミュニケーションによってこのような事態となったのか、原因究明が不十分なことも炎上の原因になっています。

ステマ疑惑でアナ雪2に影響は出る?

ステマ疑惑がぬぐい切れない広告宣伝により、アナ雪2の評判にも影響が出る可能性があります。
先述の通り、ステマはユーザーを騙すような宣伝方法となるため、発覚すると宣伝対象のコンテンツや商品などのイメージダウンにつながりやすいのです。
一部ユーザーの声ですが、ステマのせいで作品を見たくなくなった、作品の人気を落とすようなマネをしないで欲しいという声がすでに上がり始めています。
作品自体はおもしろくても、ステマをしたかもしれない作品ということで、作品のイメージに傷がついてしまったことは否めません。

これからどうなる?今後の展開について

ひとまずディズニーは謝罪文を公開したものの、今回の一件を十分に説明するものだったとはいえず、炎上が今後も続くようなら詳細をさらに詳しく説明せざるをえなくなるかもしれません。
そして、今回の炎上騒動でさらにステマという手法が周知され、批判も強くなることが予想されます。
イメージダウンのリスクが高く、広告宣伝の手法としては不適切だと判断されていくでしょう。
さらに宣伝を依頼される個人のクリエイターなども、ステマに加担することが不誠実なこと、自身のイメージダウンにつながる恐れもあることが周知され、控える動きが出てくることも予想されます。

宣伝方法をめぐっての炎上!ディズニーの今後の対応に注目

ご紹介してきましたように、人気作品の続編、アナ雪2の宣伝がステマで行われたとの疑惑があり、炎上する騒ぎとなりました。
あくまで広告宣伝の方法をめぐっての炎上となり、作品の内容に関するものではありませんが、せっかくの新作が作品の内容以外のところでイメージダウンする事態になっています。
さらに今回の一件はステマという方法自体が不誠実であり、多くのユーザーから忌避されていることを改めて知らしめる一件にもなっています。
まだ今回の炎上が完全に終わったとはいえず、今後のディズニーの対応に注目です。

ステルスマーケティングの歴史と問題点

ステルスマーケティングはインターネットが発達してから考え出されたマーケティング手法のように思われがちですが、その歴史は意外と古いものです。店や業者が雇ったサクラを行列に並ばせるような手法も、広い意味でのステルスマーケティングに該当します。歌舞伎などの芝居小屋で役者に掛け声を掛けたりするサクラはすでに江戸時代から存在し、露店で一般客を装う偽客も明治時代には珍しくありませんでした。
そうした古典的なステルスマーケティングの手法がインターネットの普及に伴ってさらに巧妙化し、口コミを装った宣伝も珍しくなくなっています。Amazonなどの通販サイトでも、架空の商品レビューが横行しているのが現状です。
インターネットを利用した新しいステルスマーケティングの手法も、古典的なサクラの手法と同様に消費者を欺くという点では共通します。売りたい商品やサービスを実際以上に優良だと思わせる目的で、一般の消費者を装って密かに宣伝する行為が問題なのです。

ステルスマーケティングとアフィリエイトの違い

ステルスマーケティングとアフィリエイトの違い
インターネットを利用したステルスマーケティングと混同されがちなのが、同じように宣伝を目的とするアフィリエイトです。アフィリエイトはブログなどの記事を公開してページ内に広告を掲載し、広告を通じて商品購入やサービス利用などの成果が発生することで報酬を得られる仕組みとなっています。ステルスマーケティングは広告だと気づかれないように宣伝する必要があるのに比べ、アフィリエイトは広告とわかる形で掲載している点が大きな違いです。
とは言えアフィリエイトもやり方を間違うと、ステルスマーケティングに該当するケースが出てきます。購入してもいない商品をいかにも使ってみたかのように装って架空のレビュー記事を掲載したり、偽の口コミを記事内に掲載したりするのはステルスマーケティングに類する行為です。そうした嘘の情報を掲載しない限り、アフィリエイトそのものがステルスマーケティングに該当することはありません。

ステルスマーケティングと吉本興業ミキの問題

吉本興業ミキの問題
冒頭で紹介した漫才コンビのミキのケースでは、2人が意図してステルスマーケティングに手を染めようとしたわけではありませんでした。京都市が市の施策をツイッターでPRしてもらう目的で吉本興業に計100万円を支払う契約をしていたため、ステルスマーケティングに当たるのではないかと問題になったのです。
ミキのツイートには広告だと明示されていたわけではありませんが、市関連のハッシュタグは付けられています。吉本興業ではこの点を強調し、ステルスマーケティングには当たらないという見解を示しました。
確かにこうしたハッシュタグは広告主との関係を明らかにすることで、ステルスマーケティングを回避する効果があるとされています。とは言え市の公金が使われている事実をハッシュタグで市民に伝えられるかどうかという点には、識者の間で疑問の声も少なくありません。

ステルスマーケティングと芸能人やインフルエンサーとの関係

インフルエンサー
同じようなステルスマーケティングの疑いは今に始まったことではなく、ブログやSNSで情報を発信している芸能人なら誰でも起こり得る話です。SNSやYou Tubeで人気を集めている個人のインフルエンサーも、情報拡散力という点では芸能人に負けていません。そうした人たちはインターネット上で大きな影響力を持つため、SNS上で商品やサービスを紹介してもらえば絶大なマーケティング効果が得られます。
実際に芸能人やインフルエンサーの持つ宣伝効果に目をつけた企業が、ステルスマーケティングの手段として利用しているケースも少なくありません。広告主との関係性を明示してステルスマーケティングを防止するために、「#PR」などのハッシュタグを活用するやり方が考えされたのです。

ステルスマーケティングに関する過去の事件・事例

過去の事件・事例

2012年 食べログ

ステルスマーケティングの存在が広く知られるようになったのは、2012年にグルメレビューサイトの「食べログ」でやらせレビューが発覚したのが1つのきっかけでした。特定の飲食店から報酬を受け取り、その店に好意的なレビューを掲載するというステルスマーケティングの手法が非難されたのです。

2012年 ペニーオークション詐欺事件

有名なペニーオークション詐欺事件で、複数の芸能人がステルスマーケティングに加担していた事実も明らかになりました。相次ぐ不祥事でステルスマーケティングの弊害が大きくクローズアップされた結果、「ステマ」が新語・流行語大賞にもノミネートされるほど社会問題として認識されるようになったのです。

2001年米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

海外では2001年に米ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが自社の映画作品を宣伝する目的で、架空の映画評論家の推薦コメントをメディアに掲載するという事件もありました。

ステルスマーケティングには手を出さないのが賢明

ステルスマーケティングは場合によっては景品表示法違反の「優良誤認表示」規制などの罪に問われる可能性があります。
また絶大な宣伝効果を持つステルスマーケティングは悪魔の手法とも言うべきテクニックで、発覚した場合は世間からの致命的なバッシングが避けられません。仮に違法でないとしても消費者を騙す行為には変わりありませんので、ネットビジネスを手がける際にはステルスマーケティングに手を出さないのが賢明です。

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