Twitter(ツイッター)が政治広告の掲載を世界中で禁止

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Twitter(ツイッター)が政治広告の掲載を世界中で禁止 時事ネタ

Twitter(ツイッター)のジャック・ドーシーCEO(最高経営責任者)は、10月30日、同社が運営するツイッター上での「政治広告」の掲載を11月22日から世界中で禁止すると発表しました。
「インターネット広告には、商業広告主にとって、信じられないほどの影響力があり、非常に有効な手段である一方で、その影響力は政治に重大な危険を及ぼしている。」として、「あらゆる政治広告を世界的に禁止することを決定した」とツイートしました。

政治広告とは

政治広告とは、そもそも、選挙を控えた候補者らが、支援を求めたり、対立候補を攻撃したりする内容のメッセージを、広告料を支払うことで優先的に表示させるツイートなどを指すものです。
2016年の米大統領選では、ロシアがFacebook(フェイスブック)上で偽ニュースを拡散したり、政治広告を使ったりして、民主党のクリントン候補を攻撃し、大統領選の結果にも強い影響を与えたとみられています。
現在は、2020年の米大統領選に向け、トランプ陣営や、民主党の大統領候補らはツイッターやフェイスブックなどのSNS上で、こうした政治広告を盛んに流しています。

政治的メッセージは金銭ではなく努力で伝えるべき


ドーシー氏は、「私たちは、常に、人々が我々のシステムを使って誤解を招く情報を拡散しないよう懸命に取り組んでいる。しかし、誰かが自分の政治広告を強制的に人々の目にさらすため、私たちに広告料を支払っているのであれば、(中略)たとえ不正確であったり誤解を招く情報でも、その人物が望むようなメッセージとして人々の目にふれてしまう。」つまり、政治的なメッセージは、人々がそのアカウントをフォローしたり、リツイートしたりしたときに人々に情報が到達するが、その情報到達を金で買うことは、人々の「決断」を奪うことになると政治広告の問題点を指摘しています。
「SNSの政治広告がなくても、多くの社会運動で大規模な訴えを行える。」「政治的メッセージは金銭ではなく努力で伝えるべきだと、我々は考える。」と、SNSを運営する側として収入源である広告に対し、自ら大きな制約を設けた理由を明かしました。

トランプ陣営(共和党)は非難、民主党は歓迎

トランプ陣営(共和党)は非難、民主党は歓迎
米大統領選を来年に控えたタイミングでのドーシー氏の発表に、共和党と民主党の選挙陣営の反応は全く対照的です。
再選を目指すトランプ氏の陣営は、ドーシー氏の表明後すぐに、「とてもばかな決断だ」と批判するコメントを出しました。ブラッド・パースカル選対委員長は、「Twitter(ツイッター)の政治広告禁止は、トランプ大統領と共和党を黙らせるための左翼による新たな試みだ。」と避難しています。
一方、民主党の大統領候補に有力視されているジョー・バイデン前副大統領の広報担当ビル・ルッソ氏は、「広告収入と民主主義の品位の二択において、少なくとも今回、収入が選ばれなかったのは励みになる」と、Twitter(ツイッター)の発表を歓迎する声明を出しました。
また、2016年の大統領選挙でトランプ大統領に敗れたヒラリー・クリントン元国務長官(民主党)も、「アメリカと世界中の民主主義にとって正しい行動だ。Facebook(フェイスブック)、あなたはどうする?」と、かつて自分に矢を放ったFacebook(フェイスブック)に対して政治広告への対応を再考するよう示唆しています。

Facebook(フェイスブック)の反応

フェイスブックの反応
Twitter(ツイッター)は、これまでも政府関係者や選挙活動中の人による投稿については問題視し、不適切な内容が含まれる場合はユーザーに事前警告する制度を導入するなど、中間的な措置を取った上で今回の決断に至っています。
一方、競合するFacebook(フェイスブック)は、これまで政治広告の禁止措置は取っておらず、ヒラリー・クリントン氏から名指しで指摘をされる以外にも多く批判を受けてきました。同社マーク・ザッカーバーグCEOは、ある記者との会議電話で「民主主義において、民間企業が政治家やニュースを検閲することが正しいとは思わない」と述べ、政治広告容認の同社方針を擁護したとされています。
ここに、政治広告禁止を決めたTwitterに民主党、政治広告を容認したままのFacebookに共和党が寄っているという構図が浮き彫りになりました。

SNSが直面する課題

SNSで仲間を見つける
ツイッターのジャック・ドーシーCEOは、「政治広告やアストロターフィング(一般利用者を装って政治的な宣伝活動を行うこと)などの悪役は、国を後ろ盾にするなどしてインターネットを通じて米国の選挙への介入継続を、また更にこれから始めようと企んでいる。さまざまなオンラインプラットフォームがターゲットを絞った対策を試みてきたが、ほとんど成果が上がらなかった。それを思えば、現時点で実施できる現実的な手段はこれしかない。」と、今回の経緯を語っています。

また、Facebookが政治広告や政治的コンテンツの制限を避けている理由のひとつは、政治広告に関しファクトチェックを行ったり全面禁止にすることは、その内容が適切か不適切かを主体的に判断することになるからだとも指摘しています。
これによって、無数の文化、言語、出来事にまたがり形成される複雑なSNS上の環境で自ら実質的な裁定者になってしまうことは、Facebookが持つ性質上難しいとの見解です。Facebookはザッカーバーグ氏自身が作り上げたモンスターであり、この問題についてCEOに泣きついても遅いと評しています。
果たして、国境や民族、文化を超えて肥大したSNSを企業として制御できるのか、これはFacebookだけに突き付けられた問題ではありません。今回のTwitter政治広告禁止が問うものはとても大きなものかもしれません。

これからの動き

今回の発表でTwitter(ツイッター)は、投票に必要な有権者登録を促進する広告は禁止の対象にはならないとしています。また、禁止措置の詳しい全容は11月15日までに公表される予定で、周知期間を経て、11月下旬から実質的に政治広告の掲載を禁じる方針を伝えています。
2020年の米大統領選には、再選を目指す共和党トランプ氏の陣営はTwitterによる政治広告を失い、同様のメッセージ戦略はFacebookが頼みとなりそうです。一方、Twitterの方針を歓迎し賛同した民主党の陣営はSNSの有料広告にトランプ批判を載せて闘うことはできません。果たしてドーシー氏の言うように、政治のメッセージを努力で伝えることができるのかが問われています。

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